会長挨拶

日和見の丘の上から

渡辺 友彦(8期生)

 日和見[ひよりみ]と聞くと、多くの方が日和見感染症を思い浮かべると思います。 宿主の感染に対する防御能が何らかの原因によって低下した時に、通常ではほとんど病気をおこさないような病原菌によって引き起こされる感染症。その程度の認識であった私が、日和見という語彙[ごい]を強く意識したのは、観測史上最も早い桜の開花が報道されていた頃であったか、東北をフィールドとする民俗学者赤坂憲雄氏のある一編のエッセイに出会ったからです。
『・・広辞苑の「日和見」の項には、(1)天気模様を見ること、(2)事の成り行きをみて有利な方につこうと形成をうかがうこと、と見える。・・「日和見主義」といえば、形勢をうかがいながら、立場を曖昧にしておいて勝ち馬に乗ろうと二股をかけることを意味している。卑怯[ひきょう]とか軽蔑とかの匂いが染み付いている。ところが、民俗社会では思いがけず、日和見はこうした恥辱とは無縁なのである。・・日本海に浮かぶ飛島で民俗調査を行なったときである。この島はトビウオ漁やイカ釣りで暮らしを立ててきたが、漁師のあいだには平等配分の原則が見いだされた。そして、日和見と呼ばれる制度があった。集落には五人の日和見がいて、かれらが集まって、天候を見て、その日の漁に出るか否かを合議して決めた。海難を防ぐことを役割とした。日和見は漁業にたけた屈強な若者のなかから選ばれた・・板子一枚下は地獄と称される海をなりわいの場とする人々は、みずからの命を託すために、日和見を選んだ。漁業にかかわる知恵や技を豊かに持ち、観察眼にすぐれ、冷静な判断を下すことができることを条件として、皆のなかから選ばれた。』(日和見から見える民主主義 赤坂憲雄 より一部抜粋)

 昨年より今年の春にかけ、沢山の新しい出会いが有りました。そして、多くの旧知の間柄の方々と語らい一つの目的を共有して活動しました。しかし今年2月14日、日本歯科医師会会長予備選挙において、残念ながらその想いはかないませんでした。そんな時に出会ったのです。最初、そのネガティブな臭いに引き込まれました。飛島の日和見の事を知った時、予備選挙は選挙人選挙であり「日和見人=選挙人」ではないか。地域で信頼され選ばれて、日本の歯科医療をリードする会長を指名する事を託された思いと責任の重さは如何ばかりかと。その声の多様性は、反映されたと信じています。

 図らずも、今回の日歯会長予備選挙に奥羽大学歯学部同窓会として参画することができました。この場は、私たちの同窓会で作れるものでなく全国の志を同じくする先生方が、同窓生である柳川忠廣先生を候補者として押し上げて頂いたからです。そして、同窓生のご協力の賜物です。いただいたご厚情に応えることが出来るのは、未知なるステージで経験した事を同窓会の財産として次のステップに生かすことと考えます。

会長 渡辺 友彦(8期生)

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